【密着取材】「私はNIKITA」イリアーナ・ヴァレンティーノ —前編—

「EXCLUSIVE」第2弾でフィーチャーするのは、RENAの総合格闘技デビュー戦の相手を務め、リベンジを果すべくSHOOT BOXINGのリングでRENAと再戦するも惜敗。そして7月6日(金)東京・TDCホールにて開催された「SHOOT BOXING Girls S-cup ~48㎏世界トーナメント2018〜」に満を持して参戦し、みごと優勝を果した、イタリアの女子格闘家Jleana Valentino(イリアーナ・ヴァレンティーノ)。

母国イタリアではモデル業もこなし、決して恵まれた環境で育ったわけではない彼女は「格闘技は『すべての人に好まれるスポーツ』ではありません。でも私たちは人生のすべてを捧げているんです」と語る。1人のイタリア人女子格闘家が、異国で1日3試合という過酷な闘いに挑み、王座に輝くまでの奇跡を追った。

この激動の一日をイリアーナに密着し行動を共にしたHIROKOさん (A-bonD Japan)のリポートでお送りします。
© Photo by Xesanat Text by HIROKO (A-bonD Japan)
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MMA JournalのHIROKOです。ワタシ実は、このMMAJournalのライターだけでなく、時々、大会側の選手管理の業務を行っていますが、今回はSHOOTBOXING Girl’s S-Cup 48kg級トーナメントを制したイリアーノ・ヴァレンティーノ選手の選手管理を行ないました。1日3試合の過酷なワンデートーナメントの頂点に立ったイリアーナの傍につき、その舞台裏の様子もリポートします。

「SHOOT BOXING Girls S-cup ~48㎏世界トーナメント2018〜」
2018年7月6日(金)東京・TDCホール

大会当日、いつも以上に緊張するワタシ。開始からまだ時間があるのに、ソワソワと落ち着かない。ワタシ自身がリングに上がる訳ではないのにこの緊張。当の本人はどんな気持ちなんだろう。そんな中、イリアーノが笑顔で会場入り。自分の控え室に入るとすぐに、食べ物や飲み物をバッグから出し、お気に入りの音楽をプレーヤーで流す。まるでピクニックのよう。2日前に20時間近くかけてイタリアからやって来たとは思えないほどのホーム感。なんか、こっちまでリラックスして、さっきの緊張がどこかに飛んでいった。(笑)

イリアーナはセコンドのレナートと大会スケジュールを入念にチェック。優勝までの3試合、途中どれだけ休めるのかなど、ペース配分・コンディション作りを考えていたんだと思う。こちらにも笑顔を投げかける余裕も見せ、控え室内は和気あいあいの雰囲気。試合2時間前、食事もしっかりと獲り、全て万全の状態。

急遽、セコンドに付くことになったUFCファイターの石原夜叉坊選手もその後に到着。夜叉坊選手のスマイルと柔らかいトーンの声に控室は更にリラックスした空気になった。

試合前、彼女が食べたご飯はワタシが用意したもの。ご飯、焼き鮭、ゆで卵。独特な剥き方で卵をペロリ。鮭も「オイシイ!ボーノー!」と食べてくれた。イタリア人だから、試合前とかパスタと食べるのかなって思ったけど、和食が大好きみたい。

オープニングセレモニー。ワタシはバックステージから会場側に降り、その様子をチェック。イリアーナ、やっぱりカッコイイ。華があるわ~。オープニングが終わり、控え室に戻ると、一転、戦闘モードに入ってた。ピリッとした緊張感。だけど、周囲を受け入れない感じではなく、オープンな緊張感。バンテージを巻かれながら、徐々にキモチを上げている様子が分った。

控室の中の椅子やテーブルを部屋の外に出し、アップ開始。これまでのリラックスした空気から一気にテンションが上がる。でも、ミットの音は軽く、レナートの声もまだ柔らかい。楽しい会話をしているかの様な掛け合い。少しだけ汗が見え始めたころに運営スタッフから準備のお願いが。伝えると、更にギアテンションが上がる。廊下に響き渡るミットの音、破裂音がハンパない。傍にいるだけで、ドキドキ緊張した。

試合が近づきバックステージに移動すると、レナートの声が大きくなる。イタリア語なので、当然意味は分らないけど、激しく力強い。でも、なんだろ、安心感のある声。こんな強くて自信のある声で何かを言われたら、選手はチカラが涌くんだと思う。

元々レナートの練習仲間で今回のセコンドを引き受けてくれた夜叉坊選手。イリアーナとは会ってまだ2日目なのに、もう長年練習を共にした仲間の様に、ごく自然に傍にいる。試合目前でテンションが上がったレナートとは対照的に、柔らかいリラックスした雰囲気を出し、バランスの取れた最高の空気を作り出していた。

ワタシも3人の動きの邪魔にならないようにセコンド準備。「頑張って!勝ってね!」と心の中で念を送ると、時折、イリアーナと目が合う。その目が戦闘モード過ぎて、ちょっと焦った。(笑) ワタシはレナートと夜叉坊選手の後ろにつく形でセコンドの位置へ。

初戦の相手は愛三選手。戦前の研究で、蹴り主体でパンチの打ち合いもするから、相性が良いかもって思ってた。試合序盤、両者ともに動きが硬い。でも、かえって二人がこの一戦に賭ける意気込みを感じたし、この初戦をどうクリアするかでこの後が決まることの重みが伝わった。

1R、バランスの取れた蹴りで愛三選手が試合をコントロールしていた印象だった。試合後、イリアーナは愛三選手が予想以上に強かったとコメントしていたけど、2R前のインターバル中、実はかなり焦っていたのだと思う。でも、イリアーナはレナートの顔をしっかりと見ながら、指示を聞いて、落ち着きを取り戻していた。

2R、レナートの力強い声が会場に響き渡る。イリアーナの動きを良く見ると、その指示にしっかりと反応しているのが分った。夜叉坊選手は相手選手の状態も観察し、別の角度からの指示をレナートに伝え、レナートがまたそれをイリアーナに伝える。一見、“チームなら当たり前でしょ”って思うかもしれないけど、レナートはイリアーナのコーチをしてまだ数ヶ月、夜叉坊選手は出会って2日目。ワタシも2日目。(笑) “この強い信頼関係はなんだ!”って思うくらい、試合中に息が合ってきてた。

そんな2R、イリアーナのバックハンドブローが愛三選手の顔面を強打。豪快に倒れる愛三選手に、会場は大きな歓声と悲鳴!!この一打でイリアーナの硬さが取れ始めたけど、愛三選手もここから猛ラッシュ。逆のコーナーにいるにも関わらず、うかつにも、愛三選手の一生懸命さに心を打たれてしまった。

判定時、勝利コールを聞いたイリアーナが両腕を上げたのを見て、ワタシはホッとしたのと同時に、またまた感動でウルッとしてしまった。控室に戻り、彼女の身体を良く見たら、赤く腫れた無数の打ち身の跡。“優勝までまだ2試合もあるの!!”って、心の中で叫んだけど、グローブを外しながらレーナートの声を聞く彼女の眼から"まだまだやるわよ"って意気込みを感じ、“ワタシも最後までしっかりとセコンドを務める”って気合が入った。

【密着取材】「私はNIKITA」イリアーナ・ヴァレンティーノ —後編— へ続く

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