ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展

(TOP) ソール・ライター 《雪》 1960年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

ソール・ライター(1923-2013)。画家を志し1946年、ニューヨークへ渡り、1950年代には『ハーパーズ・バザー』 『エル』『ヴォーグ』などファッション誌を中心に第一線で活躍するカメラマンとなった。しかし、1980年代に商業写真の世界から退き世間から姿を消す。

ソール・ライター 《映画『Beyond the Fringe』 のキャスト(ダドリー・ムーア、ピーター・クック、アラン・ベネット、ジョナサン・ミラー)とモデル『Esquire』》 1962年頃 ゼラチン・シルバー・プリント ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

その作品が再び脚光を浴びたのは、2006年、ソール・ライター83歳の年だった。
ドイツのシュタイデル社が出版した写真集『Early Color』により、1940年代から50年代に撮影されながら、長い間、 日の目を見ることがなかったカラー写真の作品群は、世界の写真界に大きな衝撃を与えた。
その後、世界各地で展覧会が開催され、2012年には、ドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター  急がない人生で見つけた13のこと』が2015年に日本でも公開され、独自の哲学に満ちたライターの人生観と作品が多くの人々の共感を呼んだ。

ソール・ライター 《天蓋》 1958年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

1923年、ペンシルバニア州ピッツバーグに生まれたソール・ライターは、ユダヤ教の聖職者ラビであった父親の跡を継ぐべく、幼いころから神学校で教育を受けるが、宗教的生活に情熱を見出せないソール少年は、独学で絵を描くことに没頭していった。1946年、息子の芸術的関心にまったく無関心だった両親の反対を押し切り、大学を退学したライターは真夜中に家を出てニューヨーク行きのバスに乗る。それは、家と宗教的生活への決別だった。

ソール・ライター 《赤信号》 1952年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

1940年代後半のニューヨークは、アメリカが初めて世界に影響を及ぼす芸術運動となった抽象表現主義が頭角を現わした時代だった。ソール・ライターはニューヨークへ着いて間もなく、抽象表現主義の画家リチャード・プセット=ダートと出会う。暗室で様々な実験を試みた写真を使い作品を創作していたプセット=ダートとの親交を通じて、ライターは写真術を学んで行く、この友情がソール・ライターの写真の隠れた才能を引き出す重要な引き金になった。948年頃からカラー・スライドフィルムでも撮影をはじめていたライターの写真は、次第にファッション誌の誌面を飾るようになっていく。絵画で培われた色彩感覚、ものを見つめる繊細な視点、独特なユーモア、エレガンスに対する適確な理解などから生まれるライターの写真は、多くの雑誌関係者の注目を浴びた。その後『ハーパーズ・バザー』『エル』『ヴォーグ』『ノヴァ』などファッション誌を中心に数多くの雑誌で活躍するが、1981年、5番街にあったスタジオは閉鎖される。

ソール・ライター 《床屋》 1956年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

ソール・ライターのカラー写真が、世に出るまでに時間がかかった理由はいくつかある。まず、「自分を売り込む」ことをその美意識が許さなかった頑なな性格だ。ライターは、イースト・ヴィレッジのアパートとその界隈が存在すれば、写真を取り続けられれば、そして絵を描き続けられれば、それで満足だったのだ。
もう一つの理由は、カラー現像を取り巻く問題だった。ソール・ライターがカラー写真を撮りはじめた時代、モノクロ現像に比べ金銭的に負担が大きく、また写真家自身がコントロールしにくい現実があった。1994年頃、未現像のままアパートに保管されていたカラー写真の現像に、英国の写真感材メーカー・イルフォード社が補助金を提供したことで事態は一変する。

ソール・ライター 《床屋》 1956年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

ライターの作品を扱っていたニューヨークの名門写真ギャラリー、ハワード・グリーンバーグ・ギャラリーで、1940年代後半から1950年代に撮影されたカラー・プリントが関係者に初披露された瞬間は、まさに「歴史的瞬間」となった。それでも毎月の請求書の支払いに苦労するライターは、友人たちの寛大な助力でやっと生活できている状態だった。しかし、ドイツの出版社シュタイデルの創設者ゲルハルト・シュタイデルが『Early Color』を出版すると、2006年、ミルウォーキー美術館で美術館における初の個展が開催され、2008年に開催されたパリのアンリ・カルティエ=ブレッソン財団での展覧会は、同館の入場者記録を塗り替えるほどの反響を呼んだ。さらに、絵画作品、モノクロ作品(ソール・ライターのベッドの下に長年保管されていたという)にも注目が集まり、いずれも高い評価を得るに至った。

ソール・ライター 《雪》 1960年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

本展は、ニューヨークのソール・ライター財団の全面的な協力を得て、同財団所蔵の写真作品(モノクロ、カラー)、絵画作品をはじめ、貴重な資料を含む200点以上を一堂に集め、天性の色彩感覚によって「カラー写真のパイオニア」と称されたライターの創造の秘密に迫る日本初の回顧展。

ソール・ライター 《タクシー》 1957年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

ソール・ライター 《無題》 制作年不詳 紙にガッシュ、カゼインカラー、水彩絵具 ソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate

「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」

[会期]2017年4月29日(土・祝)~2017年6月25日(日) 6月6のみ休館
[会場]Bunkamura(半角アケ)ザ・ミュージアム
[協力]ソール・ライター財団、ニューヨーク市観光局、デルタ航空、富士フイルムイメージングシステムズ
[後援]J-WAVE
[企画協力]コンタクト
[お問合せ]ハローダイヤル 03-5777-8600

「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」Official Site