ただ真実のためにー 映画『スポットライト 世紀のスクープ』

ボストン・グローブ紙の記者たちが、
巨大権力の“大罪”を暴いた衝撃の実話!

2002年1月、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。地元ボストンの数十人もの神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。1,000人以上が被害を受けたとされるその許されざる罪は、なぜ長年にわたって黙殺されてきたのか。この世界中を驚かせた“世紀のスクープ”の内幕を取材に当たった新聞記者の目線で克明に描き、アカデミー賞6部門(作品賞/監督賞/助演男優賞/助演女優賞/脚本賞/編集賞)にノミネートされるなど、名実ともに全米で絶賛を博す社会派ドラマ、それが『スポットライト 世紀のスクープ』である。

Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

2001年の夏、ボストン・グローブ紙に新しい編集局長のマーティ・バロンが着任する。マイアミからやってきたアウトサイダーのバロンは、地元出身の誰もがタブー視するカトリック教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出す。その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄《スポットライト》を手がける4人の記者たち。デスクのウォルター“ロビー”ロビンソンをリーダーとするチームは、事件の被害者や弁護士らへの地道な取材を積み重ね、大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑を探り当てる。やがて9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チームは一丸となって教会の罪を暴くために闘い続けるのだった……。

Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

古くから地域社会に根ざしたカトリック教会は、秘密主義に閉ざされた巨大権力であり、定期購読者の半数以上をカトリック信者が占めるグローブ紙にとってもアンタッチャブルな“聖域”だった。新任の編集局長の号令のもと、それまでの慣習を打破して困難な闘いに挑んだ《スポットライト》チームは、粘り強い調査を続けるうちに想像をはるかに超えた驚愕の事実を次々と掘り起こしていく。疑惑の神父の数が膨れ上がり、教会による隠蔽の罪が浮き彫りになる過程を事細かに再現したシークエンスには息づまるスリルがみなぎり、観る者の目を釘付けにする。

Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

また本作は、このジャンルの金字塔というべき名作『大統領の陰謀』を彷彿とさせる生粋の“ジャーナリスト映画”でもある。虐待被害者の生々しい証言に心揺さぶられたチームの皆が、元少年たちの悲痛な叫びを世に知らしめようと、寸暇を惜しんで奔走する様を力強く描出。“間違っていることは間違っている”と報じたい、“正しいことは正しい”と表明できる社会でありたい、ただその一心で、立ちはだかる権力と対峙しながらも記者魂を貫く彼らの姿は爽快ですらあり、閉塞した現代を生きる観客の共感を誘うことだろう。《スポットライト》が報じたこの調査報道は、2003年に栄えあるピューリッツァー賞(公益部門)を受賞している。

Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

本作のメガホンを執ったのは、移民問題を扱った珠玉の人間ドラマ『扉をたたく人』でインディペンデント・スピリット賞の監督賞を受賞し、日本で昨年に公開し、スマッシュ・ヒットとなったアダム・サンドラー主演のヒューマン・コメディ『靴職人と魔法のミシン』も記憶に新しいトム・マッカーシーである。緊迫感を煽るだけのミステリーや感情を押し売りする熱血ドラマに仕立てるのをあえて避け、関係者への入念なリサーチを行って事実に忠実な映像化を試みたという語り口は、このうえなく簡潔にして繊細。実在の記者たちを“ヒーロー”と呼ぶ監督の、リスペクトを込めた正攻法の演出がラスト・シーンの静かなカタルシス=本物の感動へと結実した。

Photo by Kerry Hayes ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

《スポットライト》チームの4人に扮するのは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で完全復活を遂げたマイケル・キートン、『アベンジャーズ』『フォックスキャッチャー』のマーク・ラファロ、『ミッドナイト・イン・パリ』『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』のレイチェル・マクアダムス、映画のみならず舞台やTVシリーズで幅広く活躍するブライアン・ダーシー・ジェームズ。さらに『完全なるチェックメイト』のリーヴ・シュレイバーが編集局長バロンを演じるほか、スタンリー・トゥッチ、ジョン・スラッテリー、ビリー・クラダップといった演技巧者ががっちりと脇を固めている。
本年度のアカデミー賞においてマーク・ラファロが助演男優賞、レイチェル・マクアダムスが助演女優賞にノミネートされたことからもわかるように、本作には突出した“主演俳優”は存在しない。《スポットライト》の4人はもちろんのこと、登場するすべてのキャラクターがリアルな存在感を放ち、実力派揃いの豪華キャストがまさにチームプレーに徹してプロフェッショナルな技量を発揮した。全米の賞レースで数多くのアンサンブル演技賞を受賞したことが、その証しと言えるだろう。

本ポスター

映画『スポットライト 世紀のスクープ』

2016年4月15日(金)、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開
配給:ロングライド
監督:トム・マッカーシー
脚本:トム・マッカーシー、ジョシュ・シンガー
撮影:マサノブ・タカヤナギ
編集:トム・マカードル
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、スタンリー・トゥッチ、リーヴ・シュレイバー ほか
2015年/アメリカ/英語/128分/原題:SPOTLIGHT/日本語字幕:齋藤敦子
提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』Official Site