過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道

謎めいた写真界最後のカリスマに迫る唯一無二のドキュメンタリー

あなたは森山大道を知っていますか?ある人は言うだろう。デビューから50年、81歳にして今もなお最先端で撮り続ける“ストリートスナップの帝王” 。ある人は言うだろう。“世界的ファッションブランドからコラボを求められるスタイリッシュな巨匠”。あるいは菅田将暉や宇多田ヒカル、木村拓哉やONE OK ROCKら若い世代からも絶大な支持を集める“写真界最大のスーパースター”…

今も圧倒的な人気を誇る現役写真家として、森山の右に出るものはいない。2019年には写真界のノーベル賞とも言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど、海外での再評価も高まっている。しかしその圧倒的な人気とは裏腹に、森山大道は多くの謎に包まれている。どうやってあんな写真を撮ることが出来るのか。普段どんなことを考え、どう暮らしているのか。森山大道とは一体何者なのか?これは、森山大道という謎めいた写真界最後のカリスマに迫る唯一無二のドキュメンタリーだ。

一人の写真家の人生を通して浮かび上がる「21世紀の東京物語」

謎に包まれた森山大道の写真の魅力に迫るため、映画は50年前に出版された森山のデビュー写真集に着目する。「にっぽん劇場写真帖」と名付けられたその一冊は当時、写真の概念を根底から揺さぶった衝撃的な写真集として森山の名を知らしめた。しかし今日、その価格はコレクターの間で高騰し、幻の作品集として遠い伝説になってしまった。

「大道さん、あの写真集…もう一度出しませんか?」森山を敬愛する一人の造本家と編集者が、森山にそう提案するところからこの映画は始まる。それが森山大道という巨大な謎を解き明かす一つの壮大な叙事詩になることを、まだ誰も想像もしていなかった。一つだけ確かなことは、映画館から一歩外に出た瞬間、街の姿が映画を観る前とは違って見えるはずだ。

パリ。世界最大の写真の祭典・パリフォトで、一冊の伝説的写真集が約半世紀ぶりに甦った。作者である日本人写真家の周りには、異常な黒山の人だかりが出来ている。一人一人に「森山大道」と丁寧な文字でサインをする写真家を、世界中から集まったアートファン・写真ファンが熱い眼差しで見つめている。熱狂の列は途絶えることがない。それどころか、次々と人が押し寄せてくる。果たして一体何が起きたのか。

2018年、森山大道の一冊の写真集復刊のプロジェクトが始まった。制作されるのは、森山の伝説的デビュー作「にっぽん劇場写真帖」だ。1968年に誕生したこの写真集は、現在その希少性ゆえにコレクターの間で高額で取引され、その全容が一般の目に触れることはほとんどない。あの傑作をもう一度出版したい。そう言い出した二人のクリエイターがいる。一人は、森山作品を含め多くの写真集を手掛けるデザイン界の風雲児、造本家の町口覚。もう一人は、長く森山の写真集を世に送り出してきた名編集者の神林豊。二人は、敬愛する森山大道の処女作復刊に血道をあげ始める。

同じとき、東京・新宿の街で小さなカメラを構える一人の男がいる。男は路地を抜け、脇道に分け入り、次々と街の息遣いを活写していく。それは、まるで都会を彷徨う一匹の野良犬の徘徊を思わせる。その男の名こそ、森山大道。81歳(撮影時80歳)。森山は、2020年東京五輪の準備を前に激変していく東京の姿を、小さなコンパクトカメラ一台で大胆に切り取っていく。猟犬のように。ハンターのように。

アート、ファッション、デザインをフットワーク軽く越境し、世界中から愛され尊敬される写真家・森山大道。写真界最大のそして最後のカリスマ。そのカリスマの日常にそっとカメラが寄り添う。映画は、誰も見たことがない森山の制作現場に深く立ち入っていく。

森山がコンパクトカメラ片手に街を彷徨う時、どこで何に反応し、どうシャッターを切るのか。映画は、これまでほとんど知られることのなかった森山のスナップワークの秘密の瞬間を、丁寧に採集していく。東京・新宿、秋葉原、中野、渋谷…。激変する東京の街の中で、森山は東京の何をどう見つめるのか。森山がシャッターボタンを押す決定的瞬間の正体とは何なのか。東京と写真家はどう火花を散らし、どう共鳴し合うのか。森山大道の魔法のような傑作写真の数々。それらは一体どのようにして生まれるのか。傑作誕生と創作と疾走の謎をこの映画は徐々に解き明かしていく。

一方、造本家と編集者は、「にっぽん劇場写真帖」復刊に己のすべてを賭けていた。「50年前のあれらの写真は、いつ、どこで、どのように撮られたのか?」ということに徹底的に執着する二人。彼らは、森山本人に一点一点確認し、丹念に本人の記憶を解きほぐそうと試みる。時に執拗に問い詰めていく造本家と編集者は、取り調べに挑む敏腕刑事の姿さながらだ。しかし思いがけずその作業は、次第に森山の人生のかけがえのない思い出、仲間、痛み、絶望、迷い、不安、希望をあぶりだしていくことになるのだ。

映画は、今や見ることの出来ない若かりし日の森山の貴重な暗室作業風景や、今とまったく変わることのない昭和のスナップワークシーンまでも映し出して、森山大道という巨人の過去と未来を少しずつ浮かび上がらせていく。
「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」
その森山大道の言葉を、映画は文字通り形にしていく。

写真とは何か。写すとは何か。生きるとは何か。
これは、一人の写真家の姿を通して浮かび上がる「21世紀の東京物語」である。
これは、一人の写真家の彷徨と放浪の記録である。
これは、一本の木から、一冊の写真集が誕生していく魔法の物語である。

森山大道(もりやま・だいどう)
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て64年独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、67年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。68~70年には写真同人誌「プロヴォーク」に参加し、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。以降、近年に至るまで国内外の美術館での展覧会多数。2018年フランス文化勲章シュバリエ受勲。2019年ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。主な写真集に「にっぽん劇場写真帖」(1968)、「写真よさようなら」、「狩人」(1972)、「光と影」(1982)などがある。個人写真誌「記録」は1972年のNo.1に始まり、73年のNo.5で一時中断~2006年11月のNo.6から復刊し、現在も継続出版中。最新号はNo.43。近年は「無言劇」、「Pretty Woman」(2017)、「Tights in Shimotakaido」、「Lips! Lips! Lips!」(2018)などを出版。

過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道

2020年/日本/107分/5.1ch/スタンダード/DCP/G
出演:森山大道、神林豊、町口覚ほか 
監督・撮影・編集:岩間玄 
音楽:三宅一徳 
プロデューサー:杉田浩光、杉本友昭、飯田雅裕、行実良
制作・配給:テレビマンユニオン 
配給協力・宣伝:プレイタイム 
企画協力:森山大道写真財団ほか
印刷協力:東京印書館、誠晃印刷 
2021年春、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
©︎『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』フィルムパートナーズ 

過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい Official Site
【Twitter】@daido_doc

【関連企画】
「森山大道の東京 ongoing」
「ongoing=進行中、進化し続ける」をテーマに、今なお疾走し続ける森山大道がとらえ続けてきた街・東京を、カラーとモノクロの最近作を中心に展示。
会期:2020年6月2日(火)―9月22日(火・祝)
会場:東京都写真美術館3階展示室
〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
HP:www.topmuseum.jp

「森山大道×六本木蔦屋書店 連続企画」
※4月8日(水)より臨時休業しております。なお、営業再開は、緊急事態宣言解除後を予定しております。
会期:営業再開〜7月
会場:六本木蔦屋書店
〒106-0032 東京都港区六本木6-11-1 六本木ヒルズ六本木けやき坂通り2階フロア
HP:https://store.tsite.jp/roppongi/
月ごとに毎回異なるテーマで森山大道フェアを実施。また、3,000円(税込)をお買い上げのお客様に、森山大道の写真を印刷した特製ブックカバー(単行本サイズ)をプレゼント。※無くなり次第終了