18年の時を経て、東京ドームに帰還。「RIZIN.28」

RIZIN FIGHTING FEDERATION
『Yogibo presents RIZIN.28』
2021年6月13日(日)東京ドーム

Photo:Teruyuki Yoshimura, RIZIN FF Text:MMA Journl特派員

新型コロナウイスルの終息が見えず3度目の緊急事態宣言が発令され、5月23日(日)に開催が予定されていた『RIZIN.28』が6月13日(日)に延期、5月30日(日)の『RIZIN.29』大阪大会が6月27日(日)に変更された。

RIZIN榊原信行CEOによると6月13日(日)東京ドームでは『RIZIN』『K-1』『RISE』の共同イベントとして那須川天心vs.武尊が行われるはずだった。しかし、3月28日(日)武尊が『K-1』日本武道館大会のレオナ・ぺタス戦で右拳を負傷し、この「世紀の一戦」は流れた。
これとは別に『RIZIN』は当初3月14日に東京ドーム大会を予定してたが、4月29日→5月23日に変更と緊急事態宣言に振り回される形となり、6月13日(日)に『RIZIN.28』を開催することとなった。

©Teruyuki Yoshimura

東京ドームで総合格闘技のイベントが開催されるのは18年ぶりとなる。
東京ドームは『RIZIN』の前身とも言える『PRIDE』が産声を上げた地でもあり、18年前の2003年11月9日にPRIDE GRANDPRIX 2003決勝戦ではヴァンダレイ・シウバvsクイントン・”ランペイジ”・ジャクソン、PRIDEヘビー級暫定王座決定戦アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラvs.ミルコ・クロコップなどが行われ、観客動員数67,451人の超満員札止めとなった。

あれから18年、ついに東京ドームに総合格闘技が帰還した。

©Teruyuki Yoshimura

コロナ禍で開催されたイベントは無観客、観客数制限などの条件下の元、感染対策に万全を期して実施されていたが、緊急事態宣言が発令されると延期もしくは中止を余儀なくされた。変異株が猛威を奮う前の2月に開催されたボクシングチャリティイベント「LEGEND」(東京・代々木第一体育館)では参加した選手、スタッフ、さらに観戦者全員にPCR検査を実施した。

©Teruyuki Yoshimura

この日の『RIZIN』は、来場者情報登録およびCOCOAアプリの導入を推奨し、入場時にはアルコール消毒と検温(37.5 度以上は入場不可)を実施し、感染防止対策が徹底していた。

©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura

我々取材陣の席には左右両隣に「使用不可」の貼紙がなされ、会場内の至るところに消毒液が置かれ、案内係が迅速に観客に対応していた。
15時30分、高田延彦PRIDEキャプテンがお馴染みのフレーズを叫ぶと、総観客数9.731人の会場が一気にヒートアップした。

©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura

第1試合/スペシャルワンマッチ
弥益ドミネーター聡志 vs. “ブラックパンサー”ベイノア
RIZIN MMAルール:5分 3R(73.0kg)
※肘あり
(WIN)弥益ドミネーター聡志 vs. “ブラックパンサー”ベイノア(LOSE)
3R 判定 (2-1)

昨年大晦日、朝倉未来と対戦した弥益ドミネーター聡志と、RISEウェルター級王者でありお笑い芸人の“ブラックパンサー”ベイノアの一戦。
空手道着を脱ぎ捨てたベイノアのドレッドヘアにショートタイツという出で立ちが『PRIDE』で活躍したカーロス・ニュートンを彷彿とさせた。打撃も寝技も得意な弥益はテイクダウンを狙うも、ベイノアが回避。ポジションを奪われてもMMAデビュー戦とは思えない動きで弥益の決定打も極めも許さないベイノア。終盤に弥益がキムラを狙うがベイノアが死守し、2-1の判定で弥益ドミネーター聡志が勝利した。

第2試合/スペシャルワンマッチ
シビサイ頌真 vs. スダリオ剛
RIZIN MMAルール:5分 3R(120.0kg)
※肘あり
(WIN)シビサイ頌真 vs. スダリオ剛(LOSE)
3R 1分38秒 (タップアウト:リアネイキッドチョーク)

元力士のスダリオはMMAに転向すると、昨年大晦日のRIZIN.26でミノワマン相手にカーフキックを繰り出し、様々なスポーツ経験を活かしたポテンシャルを発揮した。一方のシビサイはキックボクシングでデビューし、19歳から柔術を学ぶかたわら武術家・倉本成春氏に師事し武術を学び、様々なリングで経験を積んだヘービー級のMMAファイターだ。
エンセン井上の指導でMMAを学ぶスダリオはカーフキックとパンチで前に出るも、シビサイは冷静に対処しチャンスと見るや打撃でスダリオを追い詰める。手詰まりとなったスダリオをシビサイがテイクダウンすると、バックに回り込みリアネイキッドチョークでスダリオを仕留め、総合経験値の差を見せつける形となった。

第3試合/スペシャルワンマッチ
斎藤裕 vs. ヴガール・ケラモフ
RIZIN MMAルール:5分 3R(66.0kg)
※肘あり
(WIN)斎藤裕 vs. ヴガール・ケラモフ(LOSE)
3R 判定 (2-1)

第4試合/バンタム級トーナメント 1回戦
RIZIN MMAトーナメントルール:5分 3R(61.0kg)
※肘あり
(WIN)元谷友貴 vs. 岡田遼(LOSE)
3R 判定 (3-0)

第5試合/バンタム級トーナメント 1回戦
扇久保博正 vs. 春日井“寒天”たけし
RIZIN MMAトーナメントルール:5分 3R(61.0kg)
※肘あり
(WIN)扇久保博正 vs. 春日井“寒天”たけし(LOSE)
3R 判定 (3-0)

第6試合/バンタム級トーナメント 1回戦 石渡伸太郎 vs. 井上直樹
RIZIN MMAトーナメントルール:5分 3R(61.0kg)
※肘あり
(LOSE)石渡伸太郎 vs. 井上直樹(WIN)
1R 1分58秒 TKO(レフェリーストップ:グラウンドキック)

第7試合/バンタム級トーナメント 1回戦 朝倉海 vs. 渡部修斗
喧嘩道スペシャルマッチ
RIZIN MMAトーナメントルール:5分 3R(61.0kg)
※肘あり
(WIN)朝倉海 vs. 渡部修斗(LOSE)
1R 3分22秒 TKO(レフェリーストップ:グラウンドパンチ)

昨年末、堀口恭司との再戦にTKO負けを喫した朝倉海。海外進出を目論む朝倉は1-1となった堀口との決着を果たすため、このトーナメントの優勝が命題となった。対する渡部修斗はその名が表す通り、修斗初代ウエルター級チャンピオンの渡辺優一を父に持つ「打・投げ・極」を主体とした総合格闘家だ。
グランドに持ち込みたい渡辺は執拗にタックルを仕掛ける。引き離しサッカーボールキック、パウンドを打つ朝倉。立ち上がるとすぐさまタックルに行く渡辺はギロチンチョークを仕掛ける。朝倉は腕を外し渡辺の片腕を制しつつパウンドを連打すると渡辺の動きが止まりレフリーが試合を止めた。

©Teruyuki Yoshimura

第8試合/ライト級タイトルマッチ
トフィック・ムサエフ vs. ホベルト・サトシ・ソウザ
IZIN MMAルール:5分 3R(71.0kg)
※肘あり
(LOSE)トフィック・ムサエフ vs. ホベルト・サトシ・ソウザ(WIN)
1R 1分12秒 S(タップアウト:三角絞め)

”コーカサスの死神”の異名を持つムサエフは、冷徹な打撃を武器にRIZINライト級トーナメントを制したが、昨年9月母国アゼルバイジャンとアルメニアの紛争により徴兵され、約1年半ぶりの試合がこのライト級タイトルマッチとなった。対する”柔術界の至宝”ホベルト・サトシ・ソウザはMMA進出後も絶対的な自信を持つ極めで勝利を重ねこの日のタイトルマッチを迎えた。日系ブラジル人であるものの、国歌吹奏では第二の故郷とする日本の「君が代」を選び歌手のMay J.が熱唱。
1R早々サトシはタックルを仕掛けるがムサエフはこれを回避。再度タックルを仕掛けるとムサエフは倒されまいと堪える。そこからサトシは体を入れ替えグランドに引き込むと、逆組み三角絞めの体勢に入る。上体を起こしガードするムサエフの左腕を腕ひしぎ三角締めで締め上げる。極まりが浅いと見るや締め上げていた腕を流し、ムサエフの右腕を固め三角締めにセットするとムサエフがタップ。ホベルト・サトシ・ソウザがRIZINライト級王者となった。

©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura

第9試合/那須川天心vs.3人 スペシャルマッチ
那須川天心 vs. 大﨑孔稀、HIROYA、X
那須川天心vs.3人 スペシャルマッチ特別ルール
(-)那須川天心 vs. 大﨑孔稀、HIROYA、所英男(-)
3R 3分00秒 時間切れ

武尊との「世紀の一戦」が流れ、対戦相手が不在となった那須川天心は、3人とのスペシャルマッチを行った。当日まで3人目の”X”の名は伏せられ「キックボクシングから膝を含む足によるあらゆる打撃行為を禁止とし、バックブローおよびジャンプして打ち落とすパンチいわゆる“スーパーマンパンチ” は有効としたスタンディングバウト」というルールだったため『Xは誰だ!?』と様々な憶測が飛び交った。

1Rは21歳にして30戦を経験しているキックボクサー大﨑孔稀。
両者ともに高速で打ち合い、天心が放ったアッパーにより大﨑の鼻が変形してしまう。試合後天心自身が語っていたように「倒そう」という気持ちが強く出すぎ、力み過ぎた感じはあったものの、自信がみなぎった1Rとなった。

2R、15歳でK-1デビューをし魔裟斗二世と呼ばれたHIROYAが登場。
天心と10kg以上の体重差があるHIROYAはガードを固めプレシャーをかける。ボディでガードが下がったところを打ち込む天心。1Rの相手大﨑とは違い体重差と圧力が違うため天心は瞬時にファイトスタイルを変えていた。

3R、登場した”X”は所英男。HERO’Sミドル級世界最強王者決定トーナメントで優勝候補のアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラを右バックブローでTKOし一躍スターダムを駆け上がった。
その得意のバックブローを織り交ぜながら天心と対峙する所だったが、天心のスピードに翻弄される。それでも所は果敢に攻めるが天心が捌きながらパンチを当てた。
三者三様、体重もファイトスタイルも違うため「想像以上に疲れた」と天心は語っていた。

©Teruyuki Yoshimura

10試合/スペシャルワンマッチ 朝倉未来 vs. クレベル・コイケ
喧嘩道スペシャルマッチ
RIZIN MMAルール:5分 3R(66.0kg)
※肘あり
(LOSE)朝倉未来 vs. クレベル・コイケ(WIN)
2R 1分51秒 S(テクニカルサブミッション:三角絞め)

破壊力抜群の打撃と緻密な戦略を武器に『THE OUTSIDER』から成り上がった”路上の伝説”朝倉未来。登録者数182万人を誇るYouTuberでもある。昨年11月に修斗王者の斎藤裕とのRIZINフェザー級タイトル戦に敗れたものの「一番強いヤツとやりたい」という朝倉の希望から、クレベル・コイケ戦がこの日のメインイベントとなった。

対するクレベルはソウザ兄弟とともに静岡の「ボンサイ柔術」を牽引し、日本の格闘技大会のみならずポーランドのKSWのフェザー級王者にもなった強者だ。

1R朝倉がプレッシャーをかけながら打撃を放つと、クレベルは蹴りで応戦。さらに組みついて引き込むが、朝倉は付き合わず立ち上がる。倒すクレベルに立ち上がる朝倉。

2R、朝倉が打撃で前進するが、クレベルが対を入れ替えローと前げりで朝倉をコーナーに追い詰める。

クレベルが組みついて肘を散らしながら朝倉を倒すと三角にセット。上体を起こす朝倉に対してクレベルは腕ひしぎのフェイントをかけながら再度三角絞めの体勢に。クルベルが締め上げるとタップしない朝倉は失神。クレベルが完勝した。

朝倉は「クレベル選手の組み力があまり強くなかったので、ナメていた。自分の中の幻想に失望しています。引退も含み今後のことを考えます」と語ったその右目は大きく腫れていた。(翌日に自身のYouTubeチャンネルにて現役続行を示唆)

©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura

「力じゃない。テクニックで極める。それが柔術。でも今の柔術はあまり楽しくはない。ラペラや50/50とか。。柔術をディフェンシブな競技だと思っている人も多いが、それは間違い。自分達はエリオ・グレイシーの教えの(グレイシー)柔術をやっている。それは『セルフディフェンス』。護身術だから、打撃が来てもいかにベーシックな三角や十字、オモプラッタを極めるかを常に考えてるし、ボンサイ柔術ではそれを教えている」

©Teruyuki Yoshimura

「こんな大きな会場で試合ができることはとても幸せ。18年前ここで戦ったノゲイラ( ントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ)やヴァンダレイ(ヴァンダレイ・シウバ)はすでにスターで格闘技だけで生活が出来ていた。でも自分が14歳の時ブラジルから日本にやって来たのは工場で働くため。生きるため。ボンサイ柔術のファミリー達がいたからここまでこれた。みんなにも『ここまで出来るんだ』と伝えたい。」と語った。

©Teruyuki Yoshimura
©Teruyuki Yoshimura

18年前の格闘技バブルは異常だった。
バブルは消える。
この日闘ったファイター達はそのバブルを生きていない。
彼らにとって、
コロナ禍であっても練習することが日常であり、
試合をすることでリアルを生きている。

©Teruyuki Yoshimura

RIZIN Official Site